イーサリアム: ブロックチェーン2.0の包括的な時系列

イーサリアムの歴史

2009年にBitcoin が登場した際、暗号通貨コミュニティは自律性やセキュリティ、分散化を中心とした新しい金融パラダイムの構築に焦点を当てていました。前述のように、彼らは金融危機によって浮き彫りにされた中央集権的な従来の金融業界の問題を解決するために、金融のコントロールを個人に再分配することを目指していました。しかし、Bitcoin の仕組みを理解する人が増えるにつれ他の機能を探求し始めました。Bitcoinのブロックチェーンにさらに多くの機能を追加しようとする者もいれば、非中央集権化ネットワークのバリエーションを作成しようとする者もいました。問題は多くの開発者がアプローチに関係なく、Bitcoin向けネットワークのコードベースとアーキテクチャの構成に固執し、Bitcoinの創設者であるサトシ・ナカモト(中本哲史)氏が行ったような、動的機能を実装できるチューリング用プログラミング言語を使用していなかったところだと言えます。(開発者ではない一般の人に取っては動的関数の実装やチューリング用プログラミング言語に何ぞやと思われるかもしれません。簡単に言えば、アルゴリズムと計算概念を通じて機械が複雑な計算や論理問題を処理できるテクノロジーです。さらに、複雑な計算と論理問題を処理する初期のチューリングマシンは、今日の原始的なコンピュータと見なされています。)

Bitcoinを改善しようという試みが市場の注目を集めることはなかったですが、19歳のロシア人少年、ヴィタリック・ブテリンがBitcoinプロトコルの制限を回避する方法を考案、やがてそれがイーサリアムの創設につながりました。

イーサリアムの創設者

ヴィタリック・ブテリンは2011年に父親からBitcoinの話を初めて聞きました。当時彼は17歳で、Bitcoinには内在価値がないと考え、そのアイデアを退けました(これは今でも多くの人が持っている感覚かもしれません)。しかし、二度目にBitcoin に出会った後、ヴィタリックはこの通貨の本質と、分散化を通じて平等な機会を実現できる方法を理解し始めました。また、彼は『ワールド・オブ・ウォークラフト』というお気に入りのゲームで自身のゲームスキルが弱体化された経験を通じて、中央集権型サービスのリスクを認識しました。2013年に、彼はBitcoin ブロックチェーンの機能を拡張しようとしている他の才能ある個人と出会い、Bitcoin プロトコルの制限を克服する最良の方法は汎用プログラミング言語を使用して新しいネットワークを構築することだと結論づけました。1か月も経たない2013年11月に、彼はイーサリアムのホワイトペーパー「次世代のスマートコントラクトと分散化プラットフォーム」を発表しました。このホワイトペーパーに触発され、彼はイーサリアム財団に創設メンバーの一人として参加し、現在8人の共同創設者が認識されています。

ミハイ・アリシエ(Mihai Alisie)
ミハイ・アリシエ ミハイ・アリシエは、ヴィタリック・ブテリンとの以前のパートナーシップと経済サイバネティクスの専門知識に基づき、イーサリアムの創設チームのメンバーとなりました。彼はスイスでイーサリアム財団を設立する上で重要な役割を果たしました。彼はエーテルのプレセール（ICO）の法的枠組みを整備するのを支援し、その後イーサリアム財団の副社長に昇進しました。2015年に、アリシエは自身のイーサリアムベースのプロジェクト「アカシャ」を開始しました。

アンソニー・ディ・イオリオ(Anthony Di Iorio)
アンソニー・ディ・イオリオは、イーサリアムのスタートアップの財政的支援者の一人でした。チームが非営利のビジネス原則を採用することを決定した後、彼はより受動的な役割を選び、トロント証券取引所の最高デジタル責任者として短期間務めました。その後、彼はJaxxデジタルウォレットを開発した会社であるDecentralを設立しました。

アミール・チェトリット(Amir Chetrit)
アミール・チェトリットは、カラードコインのプロジェクトで働いている間にヴィタリック・ブテリンと協力関係を築きました。2013年12月にブテリンはチェトリットを創設チームに招待しました。しかし、2014年6月の共同創設者会議で、他のチームメンバーやイーサリアム開発者たちはチェトリットの貢献不足について疑問を呈しました。この会議で、チェトリットはイーサリアムの開発への積極的な関与を控えることに同意しましたが、共同創設者の地位は保持しました。

チャールズ・ホスキンソン(Charles Hoskinson)
チャールズ・ホスキンソンは2013年12月にイーサリアムのスタートアップのCEOとして登場しました。しかし、チームが非営利構造を推進することを決定した後、彼は財団を去り、自身のプログラム可能なブロックチェーンエコシステムであるカルダノ(ADA）を創設しました。

ギャビン・ウッド(Gavin Wood)
ギャビン・ウッドは、イーサリアムの初期開発段階における主要な貢献者の一人でした。彼はプログラミングの貢献を通じて共同創設者の地位を得ました。彼は最初のイーサリアムテストネットを作成し、ヴィタリック・ブテリンが発表したオリジナルのホワイトペーパーのテクノロジー仕様であるプロジェクトのイエローペーパーを公開しました。ウッドはまた、エコシステムの主要なプログラミング言語であるSolidityを提案しました。現在、ウッドはWeb3 Foundationとその旗艦プロジェクトであるPolkadotに注力しています。

ジェフリー・ウィルク(Jeffrey Wilcke)
ギャビン・ウッドと同様に、ジェフリー・ウィルクは純粋にプログラミングの貢献を通じて共同創設者となりました。彼はMastercoinに取り組んでいるときにイーサリアムを発見しました。彼は独自にプラットフォームのGoogle Goバージョンの作成を開始しました。現在、彼は自身のゲーム開発スタジオであるGrid Gamesに注力しています。

ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)
ジョセフ・ルービンは、さまざまな分野で豊富な経験を積んだ後、イーサリアムチームに加わりました。その後、彼はイーサリアムエコシステムを活用しようとするブロックチェーンスタートアップのインキュベーターとして機能する営利企業ConsenSysを設立しました。彼はまた、イーサリアムがこれまでに確保したいくつかの高プロファイルパートナーシップに影響を与えました。

主要マイルストーンとアップデート

2013年のホワイトペーパー公開以来、イーサリアムは新しい機能を追加するためにさまざまなアップデートを経てきました。2015年のメインネットローンチと同時に、イーサリアムネットワークのアップデートプロセスのロードマップも発表されました。ここでは、主要なアップデートとイーサリアムの価格について見てみましょう。

[STAGE-1] フロンティア(Frontier) 2015年

l 2014年：イーサリアムネットワークで使用される通貨であるエーテル(ETH)は42日間販売されました。最初のブロック(ジェネシスブロック)がリリースされるまで、Bitcoinで購入したエーテルは現金化や他のアドレスへの送信ができませんでした。交換レートは1Bitcoinで2,000エーテルであり、1,337ETHが販売され、1,800万ドルが調達されました。

l 2015年：イーサリアムネットワークがローンチされ、ガス(GAS)の概念が導入されました。
最初のブロックであるジェネシスブロックが作成され、メインネットが開始されました。

[STAGE-2] ホームステッド(Homestead) 2016年

l ホームステッド(Homestead)：いくつかのプロトコル変更とネットワークアップグレードが含まれており、イーサリアムが追加のネットワークアップグレードを実行できるようにしました。

l DAO フォーク : スマートコントラクトを通じて実行される非中央集権化自律組織(DAO)がハッカーの攻撃を受け、360万エーテルが失われました。問題のあるスマートコントラクトはコミュニティ投票に基づいて新しいコントラクトに移行されました。一部のコミュニティメンバー(マイナー)は、ハッキングがスマートコントラクトのプロトコルの欠陥によるものではないと信じていたため、ハードフォーク(既存のブロックチェーンから独立した新しいブロックチェーンを作成すること）を拒否、やがてイーサリアムクラシック(ETC)の作成につながりました。

l タンジェリンホイッスル(Tangerine Whistle)：ネットワークに対するDoS攻撃(ウェブサイトやアプリなどのシステムの可用性と合法的な使用に影響を与える悪意のある試み)への最初の対応が行われました。
これには、ネットワークの運用コードに関連する緊急の問題への対処も含まれていました。

l スピュリアスドラゴン(Spurious Dragon)：ネットワークに対するDoS攻撃への2回目のアップデートです。オペコード(人間が作成したプログラムを機械語に翻訳したコマンド)を調整してネットワーク攻撃を防止し、ブロックチェーン攻撃防止機能を追加しました。

[STAGE-3] メトロポリス(Metropolis) 2017年～2021年

l ビザンチウム(Byzantium)：マイニング報酬を5 ETHから3 ETHに調整し、スマートコントラクトの機能を改善しました。

l コンスタンティノープル(Constantinople)：マイニング報酬を3 ETHから2 ETHに調整し、プルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake)を実装する前にブロックチェーンが停止しないようにしました。

l イスタンブール(Istanbul)：レイヤー2スケーリングのサポートとスマートコントラクトへの新機能を追加しました。

l ビーコンチェーン(Beacon)：32 ETHをステーキングすることでビーコンチェーンのバリデーターになることができるようにしました。

[STAGE-4] セレニティ(Serenity) 2022年～現在

l ザ・マージ(The Merge)：イーサリアムのマイニング方式をプルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work、PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake、PoS)に移行しました。

l カンクン(Cancun)：イーサリアムのスケーラビリティを改善し、レイヤー2ソリューションに関連するコストを削減するためのアップデートを行いました。

少し難しい内容に思えるかもしれませんが、重要なポイントは一つだけです。イーサリアム財団は、
アップデートに伴ってコミュニティが合意した新しい標準をERC(Ethereum Request for Comment)と呼び、発表しています。ERC20やERC721のような標準は、これらのアップデートを通じて確立された規格です。

様々な使用例

ヴィタリック・ブテリンによって書かれたホワイトペーパー「次世代のスマートコントラクトと分散化プラットフォーム」のタイトルが示すように、イーサリアムは誰でもスマートコントラクトをプログラムし、ソースコードをネットワークに登録し、アプリケーションを作成できるようにします。現在、多くの人々がiOSやAndroidでアプリケーションを使用しており、これらのアプリケーションはストア登録のためにGoogleやAppleの承認が必要ですが、イーサリアムの非中央集権化の性質により、開発者はそのような制約なしにさまざまなアプリケーションを作成して登録することができます。未承認のアプリケーションを使用することには(例：2016年のDAOフォーク）セキュリティの問題があるかもしれませんが、その後の研究により、スマートコントラクトを開発および監査するための環境とエコシステムがより安全になり、システムは現在非常に安全になっています。

ICO

ICOとはInitial Coin Offeringの略で、株式の発行同様にコインを発行して資金を調達する方法を指します。今では多くの企業がコインを積極的に発行し、取引所で現金に換えていますが、過去にはこの概念は馴染みがありませんでした。株式市場に上場するための複雑な手順とは異なり、ICOはコインを発行するスマートコントラクトプログラムを実装し、それをイーサリアムネットワークに登録するだけで済みます。誰でもICOのプログラムを登録し、ホワイトペーパー、ウェブサイト、およびコミュニティのプロモーションを通じて投資家を引きつけることができます。イーサリアムに登録されたICOプログラム(スマートコントラクト)は改ざん不可能であり、投資家と創業者の間の契約として機能します。投資家は創業者のICOスマートコントラクトアカウントにエーテルを送ることで、最初に発行されたコインの一部を確保することができます。

DeFi

現在広く知られているトピックである非中央集権化金融(DeFi)も、イーサリアム上のスマートコントラクトを通じて実装できます。これにより、ローンや預金、利子、取引など、従来は銀行が取り扱っていた機能をイーサリアムネットワーク上で実行することができます。スマートコントラクトは、これらの操作が記述通りに実行されることを保証し、資金の移動、担保の提供、およびそれを取り戻す全プロセスを非中央集権化の形で管理できるようにします。

DEX (非中央集権化取引所)

暗号通貨に初めて触れる際、多くの人々は取引所アプリをダウンロードして購入、それを保管します。この場合、中央集権型の取引所が資産を管理します。しかし、スマートコントラクトがこの役割を担うこともできます。これらの購入機能を実装するサービスを非中央集権化取引所(DEX)と呼び、最も有名なのがユニスワップ(Uniswap)です。基本的に、非中央集権化サービスを利用してコインを他のコインと交換することができます。

NFT

2021年の主要キーワードの一つである非代替性トークン(NFT、ERC721)は、イーサリアム上でも発行することができます。Bitcoinとは異なり、同額の他の単位と同一であるのに対し、各NFTはユニークなトークンです。2021年にはNFTに対する過熱が落ち着き、さまざまな業界がNFTを利用した新しいビジネスを展開し始めました。NFTの独自の特性を活用して、投資ツール以外にも、身元確認、真贋チェック、会員資格、イベントチケットなどの用途が拡大しています。

まとめ

最近、米国証券取引委員会(SEC)から承認されたBitcoinは「デジタルゴールド」と呼ばれています。このニックネームは、その使用範囲が限られているものの、多くの人々によって認められた希少性と価値を反映しています。その一方イーサリアムは、「デジタルオイル」と呼ばれることが多く、これは石油が産業革命を推進したように、ブロックチェーンの世界を前進させる役割を果たしていることを示しています。イーサリアム2.0の成功した実装により、ネットワークの拡張性の向上、取引コストの削減、全体的なネットワーク効率の向上を通じて、拡張可能なグローバルコンピューティングプラットフォームとしての地位を確立することが期待されています。将来のアップグレードとコミュニティ主導の開発により、デジタルイノベーションの未来が形作られることが予想されます。イーサリアムエコシステムの重要なプレイヤーであるウォレットプロバイダーのD'CENTは、継続的なアップデートを反映し、依然として使いにくいと感じるユーザーに対してブロックチェーンサービスをより簡単で安全にするための努力を続ける予定です。イーサリアムはまだSECから現物ETFの承認を得ていませんが（2024年7月時点）、ネットワークの拡張性やその他の要素を考慮すると、ETF承認は時間の問題と考えられています。Bitcoin に続いて、イーサリアムが伝統的な金融市場で正式な投資商品として認められる瞬間を楽しみにしています。