スマートコントラクト：基本概念と8つの実用的な活用事例

暗号通貨投資をしている方なら誰しもが一度は耳にしたことがあるはずのワード、「スマートコントラクト(Smart contract)」。ほとんどのブロックチェーン用語がそうであるように、スマートコントラクトも同様で、初めて聞いたときにはその正しい意味が理解できない…っといったことありませんか？ブロックチェーンでいうスマートコントラクトとは一体何なのでしょうか？正確な意味を含めどのような場合に使うべきかについて詳しく見ていきましょう。

(このブログの和訳は、元英文の趣旨や意図を保ちつつ日本語として自然な表現になるよう心がけています。ブログの導入部分として、読者の皆さまにとって少しでも興味がそそられるような優良コンテンツになるよう頑張ります。続きが気になる方、または本文の内容について何か気になる部分などがありましたらお気軽にお知らせください。)

 

 

スマートコントラクトとは？

 

「smart」と「contract」の辞書上の意味

 

「スマート」は一般的に「賢い」という意味で使われるワードです。このワードは20世紀後半から、情報化時代の到来とともに急激に使用頻度が増加しました。情報化時代にふさわしい能力を持つ人を指す用語として使われ始めたと言われています。情報通信分野では機械化された、コンピューター化された、知能型、情報処理などの意味を含んでいます。つまり、情報と技術を効率的に活用できる人をスマートと表現します。今日、スマホを始めとするスマートテクノロジーやスマートTVなど、IT関連の様々な分野でスマートというワードが広く使われている理由です。

 

 

「コントラクト」というワードの辞書上での意味についてですが、辞書上では以下のようにあります。 「異なる二人、または二つのグループ間の公式な契約、または契約自体を明記し説明する法的文書」

 

これら2つのワードを組み合わせると、スマートコントラクトとは、情報処理を基盤とした、異なる二人(またはグループ)間の公式な契約と見なすことができます。

 

 

「スマートコントラクト」誕生の背景

 

私たちは普段どのような時に契約を結ぶのでしょうか。 日常生活の中で家族や友達、或いはビジネス上でお金を先方に送ったり、興味を持っている会社の株をやったり、住宅を売買したり(不動産取引)等など、主に「お金」に関わることには全て契約で行われます。

 

相手との重要な取引であればあるほど、互いに結んだ約束を守り、後でトラブルがあった際に法的上の効力を持たせるために契約書を作ったりします。

 

「送金」が成されるまでのプロセスを考えてみてください：

 

 

上記の通り相手にお金を送るだけなのに「銀行」という第三者からの介入があります。第三者を介しますのでそこで手数料も発生、もちろん手数料は送金者側が全額を負担しなければなりません。更に第三者を疑う余地もなくして、一時的はありますが事実上自分の資産を第三者に預けなければいけないという仕組みになっています。

このような問題をデジタル上で解決するための努力と試みは1980年代から続いてきました。1994年にニック・サボ(Nick Szabo)が「スマートコントラクト」という用語を作り、その概念の概要を作成しました。ついに2015年、ブロックチェーンの技術とともに「スマートコントラクト」の概念が実体化され誕生しました。従来の取引で第三者の仲介者が介入していた仕事を、ブロックチェーン上では決定論的な方法で実行できるコードの断片として誕生したのです。

 

'If - Then semantic'、つまり特定の条件が満たされた時にその契約が進行するようにするプログラミングコードとして登場したのです。ブロックチェーンの特徴である脱中央化、セキュリティ、透明性、匿名性を基にスマートコントラクトが実装できるようになりました。スマートコントラクトのコードはブロックチェーンに保存され、書かれたままのプログラムが実行されるため、信頼でき、安全です。

 

イーサリアムとスマートコントラクトについて

スマートコントラクトコードを実現できた初のネットワークはイーサリアム(以下、Ethereum)です。Ethereumはブロックチェーンとスマートコントラクトを組み合わせた最初のプラットフォームなのです。 前述、スマートコントラクトは 'If - Then semantic' のコマンドに従追従するためプログラミングが組みやすいです。Ethereumは、プログラマーが自分独自のスマートコントラクトを実装できるプラットフォームであり、Solidityというプログラミング言語で記述することができます。

 

Ethereumは第三者の仲介者なしの取引環境を作り出し、ネットワーク上で動作するアプリケーションを開発できるシステムを提供するようになりました。これをベースにトークンやNFT、DEXなどのサービスが可能になりました。 特に、非中央集権型の金融(DeFi)はｍスマートコントラクトに大きく依存する産業と言えます。

 
スマートコントラクトのメリット、デメリット

メリット

スマートコントラクトは、ブロックチェーンに登録された一つのプログラムであるため改ざんが不可能である上、作成されたままプログラムが動作することが保証されています。そのため、以下のようなメリットがあります。

 

• 1. 仲介の排除、コスト削減
  第三者の仲介者を必要としないため、コストダウン可能です。
• 2. リアルタイム対応、取引手続きのシンプル化
  特定の条件が達成されると明確なコードが自動的に実行される条件のため、人の介入が入りません。人が結果を解釈したり、交渉が終わるまで待つ必要がありません。
• 3. 情報の透明性や個人情報のセキュリティ
  Ethereumは個人の身分ではなく、復号化された固有のアドレスに公開的に接続されるため、プライバシーや個人のアイデンティティを保護することができます。

 

 

デメリット

一見複雑なシステムに見えますが、案外全てのスマートコントラクトはいわゆる悪意のある行為(ハッキング、データ改ざん、不正行為など)に弱い関数や変数を持つコンピュータープログラムなのです。つまり攻撃する側の者がその気になれば、一般公開されているコードに悪性コードを混入させ、本人の意思とは関係なく不正にアクセスし資金を盗むことができるとも解釈できます。

 

• 1. セキュリティが抱える脆弱性やバグ
  スマートコントラクトの主要なリスクの一つは、ソフトウェアで誰もが思い付くようなバグです。スマートコントラクト自体が契約書の役割を果たすため、これを展開し検証して全コードを公開するのが一般的です。しかし、コードを公開すると、攻撃者がコードの弱点を把握できるため、攻撃される可能性があります。実際に、DAOハッキング事件により数百万ドル相当のイーサが失われ、攻撃者がスマートコントラクトから資金を引き出すことに成功しました。この事件以降、Ethereumのハードフォークが行われました。
  (イーサリアム: ブロックチェーン2.0の包括的な時系列 )
• 2. 契約の不変性
  

  一度配布されたスマートコントラクトは不変性を持っているため修正が効きません。これはメリットでもありますが修正自体ができないという点は場合によってはデメリットとも捉えられます。

• 3. 不明確な規制および税金問題
  解決に至るまでに時間がかかる部分ではありますが、現時点では規制が不確かであり税金面での問題が存在します。

 

実生活におけるスマートコントラクトの活用例

 

トークンの発行

トークン発行は、ブロックチェーン技術を活用した最も代表的なスマートコントラクトの使用事例です。この過程で新しい暗号通貨やデジタル資産を生成し、配布することができます。スマートコントラクトはトークンの総供給量、発行スケジュール、配布方式などをプログラミングして自動的に管理します。

 

例えば、初期コイン公開(ICO)時に投資家に自動的にトークンを割り当てたり、時間の経過とともに段階的にトークンをリリースするなどの複雑なロジックを実装できます。また、トークン所有者の権利と義務をスマートコントラクトに明記することで透明性を確保できます。これは企業やプロジェクトが資金を調達したりコミュニティを構築したりする上で効果的なツールとなります。

 

 

トークン発行スマートコントラクトは、ERC-20(イーサリアム)、BEP-20(バイナンススマートチェーン)などの標準に従って実装され、様々なウォレットや取引所との互換性を保証します。

 

💡 Ethereum: 多くのICOプロジェクトがイーサリアムプラットフォームでトークンを発行しています。例えば、EOSやTezosのようなプロジェクトが初期資金調達のためにイーサリアムのERC-20トークン標準を使用しました。

 

 

クラウドファンディングについて

クラウドファンディング・スマートコントラクトは、従来の中央集権型プラットフォームの限界を超え、より透明性がありより高効率な資金調達方法を提供します。 1) プロジェクトの資金目標、期間、最小投資額などを設定 2) 投資家から資金を受け取り、安全に保管 3) 目標金額が達成されると自動的にプロジェクト開発者に資金を送金 4) 失敗時にはとレーター(投資主)の方に返金が行います

 

この過程で仲介者が不要となるため手数料を削減でき、全ての取引履歴がブロックチェーンに記録されるため透明性が保証されます。また、段階的な資金解放や投資家投票システムなどを通じて、プロジェクトの進行状況をモニタリングし、責任ある資金使用を促すことができます。これはスタートアップ、非営利団体、クリエイターに新しい形の資金調達方法を提供し、グローバルな投資家の参加を容易にします。

 

💡 Golem: 非中央集権型コンピューティングパワー共有プラットフォームで、ICOを通じて資金を調達した事例です。

 

 

非中央集権型取引所(DEX)について

非中央集権型取引所(DEX) スマートコントラクトは、中央集権型取引所の問題点を解決するために登場しました。このシステムでは、ユーザーが直接自分の資産を管理しながらP2P方式で取引できます。DEXスマートコントラクトは、注文書(Order Book)管理、自動マーケットメーカー(AMM)アルゴリズム、流動性プール管理などの複雑なロジックを実装します。

 

例えば、UniswapのようなAMMベースのDEXは、流動性提供者がトークンペアを預け入れ、トレーダーがこのプールを通じてトークンを交換できるようにします。スマートコントラクトは価格決定、スリッページ計算、手数料分配などを自動的に処理します。

 

このようなシステムは24時間365日運営され、中央サーバーに依存しないためハッキングやサービス中断のリスクが低くなります。また、全ての取引がオンチェーンで行われるため、透明性と監査可能性が高くなります。DEXは新しいトークンの迅速な上場、匿名性の保証、国境のない取引などの利点を提供し、DeFi(非中央集権型金融)エコシステムの中核インフラとして位置づけられています。

 

💡 Uniswap: Ethereumベースの非中央集権型取引所で、ユーザーがスマートコントラクトを通じてトークンを交換できます。
💡 SushiSwap: Uniswapと類似の機能を提供し、様々な流動性プールを通じて取引をサポートします。

 

 

デジタル式本人確認

デジタルアイデンティティ認証のスマートコントラクトは、個人情報保護と効率的な身元管理のための革新的なソリューションを提供します。このシステムでは、ユーザーの個人情報がブロックチェーンに直接保存されず、代わりにハッシュ値や暗号化された形式で保存されます。スマートコントラクトは、ユーザーが自身の身元情報を完全に制御しながら、必要な場合にのみ選択的に情報を公開できるようにします。

 

例えば、年齢確認が必要なサービスで、ユーザーは生年月日を公開せずに成人であることを証明できます。これはゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)などの暗号技術を活用して実現されます。また、スマートコントラクトは様々な身元確認機関の認証を統合して管理できるため、ユーザーは複数のプラットフォームで一貫したアイデンティティを使用できます。このようなシステムは、個人情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、KYC(Know Your Customer)プロセスを簡素化し、デジタルサービス利用の利便性を高めることができます。

 

💡 Civic: ブロックチェーンベースの身元確認システムで、ユーザーの身元情報を安全に管理し検証することが可能です。
💡 SelfKey: 個人や企業がデジタルアイデンティティを管理し認証できるプラットフォームです。

 

 

サプライチェーンの管理について

サプライチェーン管理のためのスマートコントラクトは、製品の生産から最終消費者への配送までの全過程を透明かつ効率的に追跡できるようにします。このシステムでは、各参加者(製造業者、流通業者、小売業者など)が製品の移動、品質検査、保管条件などの情報をブロックチェーンに記録します。スマートコントラクトはこれらのデータを自動的に検証し更新し、特定の条件が満たされると次の段階への移動を承認します。

 

例えば、食品業界では温度センサーと連動したスマートコントラクトが、輸送中に適正温度が維持されない場合、自動的に警告を発し、保険請求プロセスを開始できます。また、QRコードやRFIDタグを通じて消費者が製品の全履歴を確認できるため、信頼性とブランド価値を高めることができます。このようなシステムは、偽造品防止、リコールプロセスの改善、規制遵守の証明などにも効果的に活用でき、様々な産業分野で注目されています。

 

💡 VeChain: ブロックチェーンを利用したサプライチェーン管理ソリューションで、製品の生産から配送までのプロセスを追跡します。
💡 IBM Food Trust: 食品サプライチェーンの透明性向上のために、ブロックチェーンテクノロジーを使用するプラットフォームです。

 

 

投票システムについて

ブロックチェーンベースの投票システムスマートコントラクトは、従来の投票方式の限界を克服し、より安全で透明な選挙プロセスを実現できます。このシステムでは、各有権者が固有のデジタルIDを受け取り、一度だけ投票でき、投票履歴は暗号化されてブロックチェーンに記録されます。スマートコントラクトは投票期間、資格検証、得票集計などのルールを自動的に実行します。

 

例えば、投票締切時間になると自動的に投票を終了し結果を集計します。この過程で中央機関の介入なしにすべての参加者が結果を検証できるため、透明性が保証されます。また、ゼロ知識証明などの技術を活用して投票の匿名性を保証しながら、各有権者が自身の投票が正確に反映されたかを確認できます。このようなシステムは企業の株主投票、コミュニティの意思決定、さらには国家レベルの選挙にまで適用できる可能性があり、民主主義プロセスの信頼性と効率性を高めることができます。

 

💡 Horizon State: ブロックチェーンを利用した投票用のプラットフォームで、投票が行われる過程や情報の透明性、セキュリティを保証します。
💡 Follow My Vote: ブロックチェーン技術を活用したオンライン投票システムです。

 

 

保険契約について

保険関連のスマートコントラクトは、保険金請求および支払いプロセスを自動化し簡素化できます。このシステムでは、保険約款の条件がコードとして実装され、特定のイベントが発生すると自動的に保険金が支払われます。例えば、天候保険の場合、スマートコントラクトが信頼できる気象データソース(オラクル)と連動し、特定の基準(例：降水量、気温)が満たされると自動的に補償金を支払います。

 

これにより、複雑な請求手続きや審査プロセスなしに迅速かつ公正な補償が可能になります。また、スマートコントラクトは保険料の支払い、契約更新、保険金の分割支払いなどのプロセスも自動化できます。このようなシステムは保険会社の運営コストを削減し顧客満足度を高めることができ、特に少額多頻度保険やP2P保険モデルに効果的に適用できます。さらに、複数の保険会社が参加する再保険契約にも活用され、複雑な精算プロセスを簡素化できます。

 

💡 Etherisc: ブロックチェーンに基づく非中央集権型の保険プラットフォームで、スマートコントラクトを通じて保険の契約を自動化します。
💡 Lemonade: A.I.人工知能とブロックチェーンを使い保険の加入や請求プロセスをより簡略化した保険サービスです。

 

 

ゲーム内の資産管理について

ゲーム業界でスマートコントラクトは、デジタル資産の所有権と取引を革新的に管理できるようにします。ゲーム内アイテム、キャラクター、土地などを非代替性トークン(NFT)として作成しブロックチェーンに記録することで、各資産の唯一性と希少性を保証できます。スマートコントラクトはこれらのNFTの生成、取引、使用ルールなどを管理します。

 

例えば、特定のクエスト完了やレベル達成時に自動的に特別なアイテムを発行したり、アイテム取引時にロイヤリティを原作者に自動的に支払うなどの機能を実装できます。また、ゲーム間の資産移動が可能になり、あるゲームで獲得したアイテムを別のゲームで使用したり取引したりできる相互運用性を提供できます。これによりゲーム経済の透明性が高まり、プレイヤーに実質的なデジタル資産所有権を付与し、新しい形のゲームビジネスモデル(Play-to-Earn)を可能にします。このようなシステムはゲームの没入度を高め、プレイヤーの長期的な参加を促すことができ、ゲーム業界の新しいパラダイムを作り出しています。

 

💡 CryptoKitties: ブロックチェーンベースのデジタルコレクションゲームで、イーサリアムのネットワーク上からネコの売買ができます。
💡 Axie Infinity: プレイヤーがAxieというデジタル生物を収集し、バトルからの報酬アイテムを入手できる、ブロックチェーンベースのゲームです。

 

 

まとめ

私たちが日常的に利用しているポータルサイトやSNS、メッセンジャーといったサービスには、サービス履行のためにシステムを運営するサーバープログラムが存在します。これは同時に、スマートコントラクトを具現することが可能な環境が多種多彩であることを意味します。

 

スマートコントラクトがもたらす生活の変化を、皆さんはもう実感しておりますでしょうか。社会全体のシステムをスマートコントラクトで置き換えるには、解決すべき課題をまだ多く残していますが、我々の生活に革命を起こすほどのパワーを秘めていることには間違いありません。

 

これからのスマートコントラクトが、社会の様々な分野でどのように応用されていくのかについて興味を持ってこれからしっかりと見守っていくことが大事であり、生活にどのような働きや変化をもたらすのか、私たちと一緒に注目していきましょう。

 

[reference]
- https://ethereum.org/smart-contracts/#use-cases
- https://academy.dcentwallet.com/blockchain-basic/what-is-a-smart-contract
- https://github.com/ethereumbook/ethereumbook/blob/develop/07smart-contracts-solidity.asciidoc#what-is-a-smart-contract