ブロックチェーンの主要概念：中央集権型 vs 分散型 vs 非中央集権型

仮想通貨やブロックチェーン技術について議論するとき、「非中央集権型」という用語が頻繁に登場します。非中央集権型は単なる技術的な概念を超えて、データの保存や管理、意思決定の方法に根本的な変革をもたらす重要な要素です。以前の記事では、ブロックチェーンがデータの改ざんを防ぐ強力なデータリポジトリであることを学びました。この記事では、中央集権型、分散型、および非中央集権型システムの違いをより深く掘り下げていきます。これらの違いを理解することで、ブロックチェーンの最も重要な特徴である非中央集権型の意味をよく理解し、これらの特性を活用するブロックチェーン技術について深掘りします。

中央集権型システムの動作理原理

1. センターサーバー

中央集権型のシステムはセンターサーバーを中心に動作します。ココで云うサーバーはシステムの全てのデータと機能を管理し、ユーザーからのニーズを処理します。センターサーバーは、データベースの管理をはじめ、アプリケーションのロジックやユーザー認証など、様々な役割を果たします。全てのユーザーとクライアントはセンターサーバーにつながりデータのやり取りを行います。システム全体のパフォーマンスは、センターサーバーのパフォーマンスと安定性に依存します。

2.データの一元管理

中央集権型システム上では、全てのデータがセンターサーバーに集められ保存、管理されます。これにより、データの一貫性と統合管理が容易になる反面、例えばセンターサーバーがハッキングされたり物理的なダメージを受けたりすると、データそのものが危険にさらされてしまう可能性が非常に高いとも捉えられます。したがって、データベースのバックアップとセキュリティの強化が不可欠なのです。

3. 単一障害点(SPOF)

センターサーバーに障害が発生することでシステム全体が中断される場合があります。これをシングルポイントオブフェイラー(以下、SPOF)と呼びます。例えば、銀行のセンターサーバーがダウンしてしまった場合、ATMやオンラインバンキング、クレジットカード払いなど、全てのサービスが停止してしまう可能性が高いです。これらの防止策としてセンターサーバーの冗長化(予備運用)と復旧用のプランが必要になります。

4. 迅速な意思決定

中央集権型システムは中央機関による迅速な意思決定が可能であるというメリットを持っているため、もし障害が発生した場合、中央機関側からの事象認知や把握、スピーディーな対応と行動を取ることが可能です。さらに銀行でシステムエラーが発生した場合、IT部門の方で直ちに問題に対処することができます。

中央集権型システムの例

銀行

銀行システムは中央集権型システムの代表的な例と言えます。顧客は銀行を通じて口座を開設し、入・出金、ローンを受けることができます。全ての取引はセンターサーバー側で処理され、銀行はこれを管理し記録します。銀行のシステムは中央管理機関の厳格な管理下にあり、セキュリティとデータ保護に細心の注意を払っています。

中央集権型取引所

株や債券、先物などの伝統的な金融取引所に加えて、中央集権型の仮想通貨取引所もセンターサーバーを通じて全ての取引を管理し、顧客アカウントを維持します。例えば、2022年11月当時、かつては世界で2番目に大きな規模を誇っていた仮想通貨取引所のFTXが事実上の破産を申告、この事件は管理の不備やリスク管理のミス、Alameda Researchとの不透明な資金流用、内部統制の不十分、および顧客の出金要求を満たせなかった流動性危機によるものでした。また、この事件は多くの投資家に大きな損失をもたらし、仮想通貨市場全体の信頼を損ねる発端となった例としても有名です。中央集権型システムでは、特定機関からのミスや失敗が原因に、システム全体の崩壊につながる可能性が常に存在するとも言えます。

分布型システムの動作方法

1. 分散型サーバー

分布型システムは、複数のサーバーやノードが相互に接続されて動作します。各サーバーはシステムの一部のデータを保存、管理するため、ユーザーのニーズを独立して管理することが可能です。この方法はシステム全体のパフォーマンスが特定のサーバーだけに依存しないようにすることで高いアベイラビリティ(可用性)とスケーラビリティを実現します。

2. データの分散管理

分布型システムでは、データが複数のサーバーに分散して保存および管理されます。これにより、データの一貫性を維持しながらシステムの耐久性を向上させることが可能になります。例え特定のサーバーに問題が発生した場合でも他のサーバーが当該のデータを保持し、サービスが中断されてしまう事態を未然に防いでくれます。データのレプリケーションとSyncのメカニズムがカギとなります。

3. 単一障害点(SPOF)の防止

分布型システムでは、特定のサーバーが故障しても代わりに他のサーバーが動作するためシステム全体の中断を未然に防ぐことができます。その例としてクラウドサービスの場合では複数のエリアにサーバーを配置することで、特定場所のサーバーが障害により中断されてしまっても他エリアのサーバーが役割を担いサービスが継続されることになります。

4. 分布においての意思決定

分布型システムでは、複数のサーバーやノードが協力して意思決定を行うため、中央機関によるダイレクトで迅速な意思決定よりは時間がかかることがありますが、システム全体の透明性や信頼性が向上する効果が期待できます。

分布型システムの例

クラウドサービス

クラウドサービスは分散型システムの良い例と言えるでしょう。複数のエリアに分散されたデータセンターが顧客データを保存し、サービス自体が中断されないように働いてくれます。例えば、アメリカ東海岸のデータセンターが障害で機能できなくなった場合でも、西海岸のデータセンターがこれを引き継ぎ引き続きサービスを維持することができるのです。

電力供給システム

電力供給システムも分散型設計を使用して停電を阻止します。電力網は複数の発電所や変電所が相互間接続されており、特定場所で発生した問題により電力供給全体に影響が及ばないようにしてくれため、より安定した持続可能な電力供給が可能になります。

非中央集権型システムの動作原理

1. 分散型台帳技術

非中央集権型システムは、ブロックチェーンのような分散台帳技術を使用してデータを分散保存、管理します。中央機関を介することなくネットワーク上への参加者皆がデータの真正性を検証し記録します。各参加者は台帳のコピーを持ち、また新規の取引は合意アルゴリズムを通じて検証が行われます。

2. 自由な参加方式

非中央集権型システムでは、誰でも自由にネットワークに参加や貢献が可能です。これによりシステムの開放性と透明性が向上し、特定の機関や企業に依存せずに運営できるようになります。つまりBitcoinネットワークに誰でもマイニングや取引を通じて参加することができます。

3. 信頼に基づく運営体制

非中央集権型システムは、中央機関を介さず誰にでも公平なルールに基づき運営されます。これは暗号学的アルゴリズムと合意メカニズムを通じて達成されます。ブロックチェーンの場合、プループ・オブ・ワーク(PoW)や株の証明(PoS)などの合意アルゴリズムが取引の信頼性を保証します。

4. 透明性と不変性

非中央集権型システムは全ての取引が分散台帳に記録され、誰でもこれを検証できるため、高い透明性を提供します。一度記録されたデータは変更できないため不変性が保証されます。これはデータの完全性を維持する上で重要な役割を果たします。

非中央集権型システムの例

Bitcoin

Bitcoinは非中央集権型システムの代表的な例です。中央機関なしでネットワーク参加者が取引を検証し、ブロックチェーンを維持します。これは分散台帳技術とPoWアルゴリズムを通じて信頼できる取引を可能にします。Bitcoinは非中央集権型インフラの本格的な始まりを告げました。

イーサリアムと非中央集権型アプリケーション(DApp)

イーサリアムはスマートコントラクト機能を提供し、様々な非中央集権型アプリケーション(DApp)の開発を可能にします。イーサリアムネットワークは非中央集権型取引所(DEX)、非中央集権型自律組織(DAO)、非中央集権型金融(DeFi)など、様々な形式のDAppが運営され、ユーザーにより多くの自由と透明性を提供します。

非中央集権型アプリケーション(DApp)の紹介

ブロックチェーンのような非中央集権型ネットワーク上で運営されるアプリケーションは、現在様々な分野で開発されています。これらのDAppは複数のセクターにわたる革新的な変化を推進し、中央集権型システムで発生する可能性のある多くの問題を解決する潜在力を持っています。以下は代表的な非中央集権型DAppの種類とその例です。

1. 非中央集権型取引所(DEX)

非中央集権型取引所(DEX)は、センターサーバーなしでユーザー間の直接的な仮想資産取引を可能にするプラットフォームです。DEXはスマートコントラクトを利用して取引を自動的に実行および検証します。これにより中央機関の介入なしに安全で透明な取引が保証され、低い手数料とより大きな自由が提供されます。例として、UniswapやSushiSwapがあります。

2. 非中央集権型自律グループ(DAO)

非中央集権型自律グループ(DAO)は、中央管理主体なしでスマートコントラクトを通じて運営される組織です。DAOの全ての意思決定は参加者の投票によって行われ、透明かつ公平な運営が可能です。DAOは非中央集権型ガバナンスの代表例であり、参加者が共同でプロジェクトを管理および発展させることができます。例として、MakerDAOやDAOstackがあります。

3. 非中央集権型金融(DeFi)

非中央集権型金融(DeFi)は、従来の金融システムを非中央集権型ネットワーク上で実現したものです。DeFiアプリケーションはスマートコントラクトを利用して、ローン、預金、取引などの様々な金融サービスを提供します。これによりユーザーは銀行のような中央機関を経由せずに金融サービスを利用できます。例として、CompoundやAaveがあります。

4. NFTマーケットプレイス

NFTマーケットプレイスは、非代替性トークン(NFT)を取引できるプラットフォームです。NFTはブロックチェーン技術を利用してデジタル資産の所有権を証明し、アート作品、音楽、ゲームアイテムなど様々な形態のデジタル資産が取引されます。NFTマーケットプレイスは非中央集権型の方式で運営され、ユーザーにより大きな透明性と所有権を提供します。例として、OpenSeaやRaribleがあります。

5. プレイトゥアーン(P2E)ゲーム

P2E(プレイトゥアーン)ゲームは、ゲームをしながら仮想通貨やNFTを獲得できる形態のゲームです。これらのゲームはブロックチェーン技術を基盤としており、ゲーム内資産の所有権を分権化し、ユーザーに実質的な経済的利益を提供します。例として、Axie InfinityやThe Sandbox等があります。

非中央集権型アプリのDAppは、ユーザーにより多くの自由と透明性を提供し、中央集権型システムのデメリットを補完する革新的な技術です。これにより、金融、ゲーム、アートなどの様々な分野で新たな機会を創出しています。

非中央集権型アプリケーション(DApp)の使用方法

上記のような様々な非中央集権型アプリケーション(DApp)の使用には、個人向けのウォレットが非常に重要です。DAppを使用するには、ネットワーク上のブロックチェーンアドレスを所有する必要があり、これをサポートするウォレットでアドレスを作成することができます。個人向けのウォレットはDAppに接続し、非中央集権型取引所での入出金受け取り、投票参加、エアドロップの受け取り、ステーキングなどの様々な機能を実行できます。また、NFTの取引や保管にも使用されます。DAppを使用する際には、常にセキュリティを最優先に考える必要があります。公式ウェブサイトやアプリケーションを使用し、フィッシングサイトに注意してください。取引を提出する前に詳細を慎重に確認してミスを防ぐことも重要です。D’CENTのように信頼性のある個人向けのウォレットは、非中央集権型アプリケーション(DApp)との接続を容易にし、ユーザーがより便利に非中央集権型のサービスを利用できるようにします。これにより、ユーザーは金融、ゲーム、アートなどの分野で非中央集権型だからこそのメリットを提供し、より自由の効く透明性のあるデジタル環境を体験できまず。

まとめ

非中央集権型は、中央集権型と分散型のデメリットを克服することを目指しており、ブロックチェーン技術とBitcoinの登場により、様々な産業でその適用可能性を示しています。非中央集権型システムは特定の機関への依存を排除することで、より安全で透明な取引を可能にし、信頼性とセキュリティを大幅に向上させます。さらに、全ての取引とデータは分散台帳に記録され、誰でもこれを検証できるため、システムの透明性が向上し、不正行為を防止します。非中央集権型のもう一つのメリットは、その開放性と自律性であり、誰もがネットワークに参加し貢献する公平な機会を提供することです。しかし、非中央集権型システムは完璧ではなく、意思決定の遅延、責任の不明確、設計および維持の難しさなどの課題があります。これらの問題を解決するために、継続的な研究と改善が必要です。非中央集権化は単なる技術革新を超えて、社会的および経済的構造の根本的な変化をもたらす可能性を秘めており、公平で透明な未来を築く道を開いています。次回では、Bitcoinがどのような仕組みで成り立ち、どのような方法で非中央集権化が実現に至ったかについて語ります。