
Pectraがイーサリアムで有効化:知っておくべきポイント
TL;DR
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PectraアップグレードがEthereumメインネットで正常に適用
Prague(実行レイヤー)とElectra(合意レイヤー)を統合した大型ハードフォークが2025年5月7日に実施されました。
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主要EIP導入:アカウント抽象化とバリデーターのステーキング上限引き上げ
EIP-7702およびEIP-7251により、ウォレット機能の向上、運用効率の改善、分散性の維持が実現されました。
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Rollupの拡張性とデータ処理の柔軟性が向上
動的なブロブ容量調整(EIP-7742)とスケーリング(EIP-7691)により、L2の手数料安定性と処理能力が強化されました。
Ethereumの最新アップグレードであるPectraは、2025年5月7日にメインネットで無事に適用されました。このハードフォークは、以前計画されていたPrague(実行レイヤー)とElectra(合意レイヤー)を統合し、Ethereumの性能・スケーラビリティ・ユーザー体験を大幅に向上させることを目的としています。
アップグレード前後には、主要な取引所が一時的に関連資産の入出金を停止する対応を行いました。それでは、このPectraアップグレードの具体的な内容を見ていきましょう。
アップグレードの適用までの流れ
Ethereum財団がPectraアップグレードを公式に初めて発表したのは2024年11月7日であり、その際にMekongテストネットのリリースも行われました。Mekongは、Pectraで導入予定の主要EIPを統合した短期テストネットで、ウォレット開発者やバリデーターが新機能を事前に試すために設計されました。
その後、2025年1月16日に行われた第203回All Core Developers Execution(ACDE)会議にて、メインネットでの適用を3月中旬に仮決定しましたが、テスト中に発見された問題によりスケジュールが見直されました。最終的にEthereum財団は公式ブログを通じて、2025年5月7日にメインネットでPectraを有効化することを発表しました。
Prague + Electra = Pectra
Pectraは、実行レイヤー「Prague」と合意レイヤー「Electra」を1つに統合するアップグレードであり、多くの技術的改良が含まれています。特に注目すべきは、アカウント抽象化(EIP-7702)、バリデーターのステーキング上限引き上げ(EIP-7251)、ブロブ容量の動的調整(EIP-7742)です。これらはEthereumの拡張性とユーザー体験を大きく向上させる要素です。
主な変更点
1. EIP-7702:スマートアカウント機能導入(アカウント抽象化)
Vitalik Buterinらにより提案されたEIP-7702は、外部所有アカウント(EOA)に対し、一時的にスマートコントラクトのように振る舞わせることを可能にします。トランザクションにスマートコントラクトコードを添付することで、そのトランザクション中のみコードが実行され、完了後には元のEOA状態に戻ります。
これにより、一括トランザクション、ガス代の肩代わり(ペイマスター)、ソーシャルリカバリーなど、利便性を大きく高める機能が可能になります。
2. EIP-7251:バリデーターのステーキング上限引き上げ
これまでは、Ethereumのバリデーターがステーキングできる上限は32 ETHで、それ以上のETHを預けるには複数のバリデーターインスタンスを運用する必要がありました。これは運用コストとネットワーク効率の面で課題がありました。
Pectraにより、1バリデーターあたりのステーキング上限は2048 ETHまで引き上げられ、大規模オペレーターによるノード統合と効率向上が可能になりました。分散性を保つため、バリデーターの数には制限を設けておらず、スラッシング時のペナルティもステーク量に応じて増加することで、より責任ある運用が促されます。
3. EIP-7742:ブロブ容量の動的調整
ブロブはEIP-4844で導入されたデータ形式で、Rollupにとって安価かつ拡張可能なデータ提出手段として活用されます。従来は、1ブロックあたりのブロブ数が固定されており、トラフィック増加への柔軟な対応が困難でした。
EIP-7742は、ブロブ関連パラメータを合意レイヤーに移し、ネットワーク状況に応じて動的に調整できるようにします。実行レイヤーは合意レイヤーから提供される新しいフィールドtarget_blobs_per_blockを参照して処理を行います。
4. EIP-6110:バリデーター入金のオンチェーン処理
Pectra以前では、バリデーター入金は合意レイヤーによって非同期で処理されており、実行レイヤー側での追跡が困難でした。
EIP-6110により、入金情報が実行レイヤーのブロックに直接含まれるようになり、処理の透明性が向上します。今後はウォレット内でのUXやモニタリング機能の改善にもつながると期待されています。
5. EIP-7002:スマートコントラクトによるステーキング出金制御
従来、出金の認証情報は固定されたEOAまたはBLSキーであり、柔軟な出金条件の設計が難しい状況でした。EIP-7002では、スマートコントラクトが出金を制御できるようになり、自動処理やイベント連動、条件付き分配が可能になります。
これにより、ステーキングプールやDAO、企業向け運用にも適した高度なセキュリティ構成(マルチシグや遅延出金)の実装が可能です。
6. EIP-7691:ブロブスケーリング
1ブロックあたりのブロブ数が3個から6個に増加し、トラフィックが多い時間帯でもL2ソリューションが安定したガス代を維持できるようになりました。Ethereumはより信頼性の高いデータ可用性レイヤーとしての役割を強化します。
今後の展望:Pectra以降のEthereum
Pectraは、EthereumのスケーラビリティとUXを強化する重要なアップグレードであり、今後予定されているFusakaアップグレードに向けた基盤となります。EIP-7702によるアカウント抽象化の進展は、ウォレット機能、セキュリティ、ユーザーアクセス性をさらに高めると期待されます。
ただし、これらの機能はすぐにすべてのユーザーに必要なものではなく、実際の採用にはウォレットやエコシステムの対応が不可欠です。現時点では、D’CENTウォレットはこれらの機能を導入する予定はありません。ユーザーの皆様は従来通り、安全にETHやトークンの管理を行うことができます。
今後もEthereumエコシステムの動向とユーザーのニーズを注視し、変更がある場合は本ブログを通じてお知らせいたします。
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